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■ドラマチック京都

平家物語(4) 清盛に運命を変えられた女性たちの足跡

 平家が日常使っていた西八条第に暮らす清盛。その強大な力の前で運命を狂わされた女性は多い。

祇王寺

 仁安2年(1167年)、清盛は太政大臣になった。権力を一手に握った権力者には周囲の批判の声は聞こえない。この館に祇王、祇女の姉妹白拍子を入れて華やかな日々を過ごしていた。しかし、ここにもう一人の白拍子、16歳の仏御前が登場。祇王のとりなしで清盛の御前に出たのだが、たちまち清盛の心が仏御前に移っていく。脇にしりぞけられた白拍子姉妹は、3年後に祇王(21歳)と19歳の祇女が剃髪して嵯峨野に隠れてしまった。その場所が祇王寺だが、まもなく仏御前も剃髪してあとを追う。仏御前は祇王のおかげで清盛の寵愛を得たのに、2人を追い出した形になったことで良心の呵責にさいなまれていたのだ。祇王寺には鎌倉時代末の作といわれる祇王祇女らの像が残されており苔むした二人の墓もある。

祇王・祇女の錦絵

 平家物語はこのいきさつを大きなスペースを割いて描いている。JR西大路駅近くの若一神社にはこんな様子を描いた江戸時代の錦絵が残っている。この錦絵に描かれている様子は平家物語の中にある。西八条第を去る祇王は「なからん跡の、忘れがたみにもとや思ひけむ、障子になく々々一首の歌をぞかきつけける。もえ出るも枯るヽもおなじ野辺の草 いづれか秋にあはではつべき」。
 この歌を刻んだ歌碑も同社の境内に建っている。

 清盛に運命を翻弄された女性はまだいる。常盤御前。

 平治の乱(平治元年、1159年)で夫の源義朝を清盛に殺された常盤御前は牛若(のちの源義経)ら3人の幼子を連れて逃亡を続けていた。しかし母が清盛に捕まったため名乗り出て助命を嘆願。このとき、清盛はその美貌のとりこになり七条通朱雀に邸を与えてかこったという。夫の仇の保護の下でその子までもうけたが、この常盤御前が住んでいたのも西八条第のすぐ北。

 このほか、美貌で琴の名手だった小督(こごう)局も清盛のために人生の歯車が狂った一人とされている。高倉天皇の中宮、徳子に仕えていたが、天皇の寵愛を受けるようになってしまった。さらに、清盛の娘婿の藤原隆房とも関係があったため、娘婿を2人まで手玉に取ったとして清盛の怒りを買った。一時は嵯峨に隠れたが、高倉天皇に見つけ出され帰洛。再び清盛にみつかり尼にされて洛外へ追放される。

小督塚

 嵐山には小督の塚や高倉天皇の命で小督を探していた使者が、その琴の音を聞いたという琴きヽ橋の碑などがひっそりと残っている。

 清盛の二女、徳子もある意味では翻弄された一人だろう。母・時子の妹・滋子(建春門院)と後白河上皇の間に生まれた高倉天皇に承安元年(1171年)、入内した。しかし、皇太子がなかなか生まれない。後白河法皇の権力を背景に平家の安泰を図ろうとする父・清盛との狭間で苦しんだ。そして、やっと授かった言仁親王(のちの安徳天皇)がわずか8歳で祖母の時子(二位の尼)とともに壇ノ浦に沈み、みずからは助けられて剃髪、建礼門院として余生を大原・寂光院で過ごすことになる。

長楽寺前景

 この徳子が出家したのが東山、円山公園の南東にある長楽寺(吉田のあたりの僧坊という説もある)。同寺の僧から戒を受けた。文治元年(1185年)。

 

 

 

【祇王寺】右京区嵯峨鳥居本小坂町
【小督塚】右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町(阪急・嵐山徒歩10分、京福嵐山線・嵐山徒歩5分)
【琴きヽ橋の碑】右京区嵯峨天龍寺造路町(阪急・嵐山徒歩10分、京福嵐山線・嵐山徒歩5分)
【長楽寺】東山区円山町(阪急河原町徒歩15分、京阪四条徒歩10分)
【若一神社】下京区七条御所ノ内本町(JR西大路駅徒歩5分)

 地図参照(地図1地図2

<余談>

小倉山

 「嵯峨・嵐山」=京都観光でははずせないスポット。しかし、平安時代は洛中から遠く離れた草深い隠れ里だった。祇王や祇女をはじめ、小督の局もここに身を潜めた。また平重盛に仕える武士だった斎藤時頼(滝口入道)が横笛との恋に苦しんだあげくに出家して身を潜めたのも祇王寺の隣。

 もっとも、当時から嵯峨は紅葉の名所で観光スポットでもあったようだ。
小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」(貞信公)
 この素晴らしい紅葉よ、できれば(醍醐天皇の)御幸まで散らないでほしい、と詠んだのだが、いまもその紅葉を求めて多くの観光客がやってくる。


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