「アメーバ経営」移植着々 京セラ、買収の三洋携帯電話事業を改革
京セラが4月に買収した三洋電機の携帯電話事業に、独自の経営管理手法「アメーバ経営」の移植を着実に進めている。三洋から引き継いだ大東事業所(大阪府大東市)や岐阜事業所(岐阜県安八町)など、国内にある携帯電話の開発・製造拠点に「時間当たり採算制度」という独自システムを導入。売上高を伸ばす一方で原材料費などを抑え、効率のいい仕事で労働時間を減らし、最終的な採算向上をねらっている。
三洋の携帯電話事業の買収で、京セラの通信機器関連部門の事業規模は3660億円と社内最大の部門になった。だが、買収した事業はかつて三洋の業績不振を招いたものだけに、一見すると統合効果を生み出す道のりは平坦(へいたん)ではなさそうにみえる。
4月から事業所に導入した「時間当たり採算制度」は、異なる部門同士でも、各工程が1時間当たりどれだけの付加価値を上げたかがひと目で把握できるのが特徴。三洋出身者に採算性やコスト意識を植え付けていくのが最大の狙いだ。
「京セラの哲学を学べば、旧三田工業(現京セラミタ)のように再建していくだろうし、1年もたてば“孝行息子”になってくれると思う」
5月30日、全額出資子会社の京セラミタが大阪市中央区の本社敷地内に完成させた研究開発棟の披露パーティーで、京セラの稲盛和夫名誉会長はこう語り、通信機器関連部門の前途に強い期待感を示した。
京セラの携帯事業は北米で苦戦が続いており、今回の事業統合で北米市場を建て直して、「世界に打って出る」(京セラ首脳)ためにも、アメーバ経営の手法を定着させて高収益体質をつくることが不可欠。
京セラミタのように、これまでの成功例から蓄積したノウハウを、どれだけ三洋の事業所に植えつけられるかが鍵となりそうだ。
一方で、京セラはこのアメーバ経営を、コンサルティング事業を手がけるグループ会社、KCCSマネジメントコンサルティング(東京都港区)を通して、他企業への導入に力を入れている。
社員数200~300人の企業の場合、約10カ月かけてアメーバ経営を一通り定着させる。同社のコンサルタントがすべてを仕切るのでなく、企業側に特別チームをつくって参加してもらい、自主的に運用できるよう導くのが特徴だ。
森田直行社長(京セラ副会長)は「勉強会などを繰り返し、6カ月も過ぎれば社員の意識が変わり、経営センスが磨かれてくる。導入にかかった費用を10カ月以内で回収できた企業も少なくない」という。
これまでは中堅・中小企業が顧客の中心だったが、今後は医療・介護福祉分野にも積極的に進出する方針。平成29年度の売上高は19年度実績(約20億円)の5倍となる100億円を目標に掲げている。
京セラがアメーバ経営を社内で初めて導入したのは43年前。自社の事業や他企業へと、舞台は着実に広がっている。
アメーバ経営 京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長が考案した独自の経営管理手法。会社組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団に分割し、各アメーバが独立採算で運営する。小集団化することで全員参加の経営につながり、部門リーダーの経営者意識が養われるなどの効果が期待できる。1つのアメーバの適正人数は10人程度。京セラ単体で現在、2500~3000のアメーバが存在し、各アメーバは分割や統合を毎月繰り返しているという。
(2008年7月 3日 08:36)

