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ケーキハウスツマガリ社長 津曲 孝さん(57) (5)住宅街で独立

見えないところで誠尽くす  

 独立の場所に選んだのが、現在の本店(兵庫県西宮市甲陽園本庄町)です。当時娘がぜんそくだったので、空気のいい場所で生活しようと思ったからです。

 住宅街の真ん中にある店。場所を知っている人しか来ません。雑居ビルの1階ですが、坂道に面した入り口は半地下になっていて、車がとまったら入り口が見えなくなるほど。私の店の前にも、うどん店や書店などいろんな店が入っていたようですが、すべて撤退していました。  

 店内販売以外に売り上げを伸ばす方法はないか。贈答用でのギフト需要に目を付けました。ギフトなら1度の注文も多いし、通信販売にも販路が広がる。試食販売を始めました。  

 カタログ請求があった場合、カタログだけでなく、試食品も付けるのです。それも試食用の小さい商品ではなく、実際に店内で売っている商品をまるまる1個つける。試食用をもらうより、実際の商品をもらった方が、お客さまもうれしい。購買に結びつくし、新しいお客さまも紹介してくれます。  

 現在、当社の売り上げの9割近くはギフト商品になっています。17坪(約56平方メートル)の店は20年間、広さはもちろん外観も内装も同じです。全く代わり映えのしない店ですが、原理原則はしっかりしているつもりです。  

 洋生菓子は本店で、作りたてを責任をもって提供する。だから、支店では販売していません。また、これ以上、支店も出さない。会社を大きくすると、商品に目が届かなくなってしまうからです。  

 バターは北海道・十勝、砂糖はアルゼンチンと、実際に味を確かめたオーガニック品しか使っていません。本物の材料でなければ、本物の商品は提供できない。商品を優先させることが、お客さま優先になると信じています。  

 創業時から店の上で寝るのが習慣でした。最高責任者は、常に現場にありたいと思うからです。今でも、近くの研究所で寝泊まりしています。冷凍機の音が聞こえないと、眠れなくなってしまいました。  

 今後も現場を大事にし、菓子を作り続けます。人に見えないところほど誠を尽くして。社員それぞれの人間味で、味のハーモニーを作っていこうと思います。=おわり

(聞き手 内山智彦)

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