産経関西

[別腹の誘惑] 2008年8月13日

子規の柿 - 「天平倶楽部」(奈良市今小路町

子規にちなんだ新名物 素朴な形が郷愁さそう

 《推薦人 喫茶店 カフェ シャローム 谷原弘恵さん「かわいらしくて、ちょうどいい甘さ」》

 派手さを抑えた渋いオレンジ色。どことなくひなびた色が郷愁をさそう。「かわいらしくて、甘さもきつすぎずちょうどいい」。奈良公園近くの奈良市今小路町で喫茶店「カフェ シャローム」を営む谷原弘恵さん(56)のお気に入りは、近くの日本料理店「天平倶楽部」のまんじゅう「子規の柿」だ。

 東大寺のそばの落ち着いた場所に店を構える天平倶楽部は、平成3年、有名旅館「対山樓」の跡地にオープンした。

 俳人・正岡子規は「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」の句で有名だが、明治28年に同館に宿泊した際、部屋から見える柿の木を題材に「秋暮るゝ奈良の旅篭(はたご)や柿の味」と詠んだという。この木とみられる古木は今も残り、同店は跡地を買い増し、句碑も建てて平成18年に「子規の庭」として整備。一方で、故事を生かした新たな名物をと、奈良市内の菓子業者「丸福もりもと」と共同で「子規の柿」を開発した。

 店を取り仕切る同店代表の中塚隆子さん(64)は「子規の好物だった柿の、オリジナルな菓子を作ることで、近代文学に貢献した業績を知ってもらいたいと思った」と話す。

 色合いも形も、本物に近い物を目指した。「ぱっと見て、懐かしい雰囲気が感じられるような菓子にしたかった」。一口サイズだが、昆布を使い、へたもしっかり再現されている。しっとりとした皮の中には、甘さを抑えたこしあん。刻んだ干し柿が混ぜられていて、ほどよいアクセントになっている。

 開発には試行錯誤を重ねた。「柿は加工するのが難しい果物。火をいれると味も香りも飛んでしまいますから」。完成まで約半年かかった。

 包装にもこだわった。箱と包装用の布は淡いオレンジ色。箱に張る紙帯には、子規直筆の「秋暮るゝ…」の句が印刷されている。句をあしらったしおりも“おまけ”としてついている。発売から約1年。「子規の庭」が話題を呼んだこともあり、売れ行きは好調だとか。奈良県が推奨する「奈良のうまいもの」にも認定され、奈良土産としても人気だ。

 子規ゆかりの趣ある菓子。古都の土産にはぴったりだろう。

 (川瀬充久)

 天平倶楽部 奈良市今小路町45の1。近鉄奈良駅から北東へ徒歩約20分。TEL0742・27・7272。「子規の柿」(6個入り900円)は店内で販売。料理では、全国から厳選素材を取り寄せ、懐石や弁当、一品料理などさまざまなメニューを用意している。年中無休。営業時間は11時半~15時と、17~22時(土、日、祝日は11時半~22時)。

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