2008年10月29日
光世証券社長 巽大介さん - 「梅市」
ひとつとして同じ料理なし 足さず引かず「生成り」の味
大阪・東心斎橋の日本料理「梅市」は、光世証券(大阪市中央区)社長の巽大介さん(44)が、先代である父、故・吾朗さんの時代から2代にわたり、ほれ込んだ店。大学生のころ、父に連れられてのれんをくぐり、今でもふらりと立ち寄る。
お決まりのメニューなどない。「少なめで」「たくさん」などと腹の膨れ具合を伝えると、一品一品を丁寧に出してくれる。初めて店を訪れてから、もう25年近くたつが「一度たりとも同じものを食べたことがない」と巽さんは話す。
梅市を営む奥田高光さん(59)は18歳で日本料理の道に入り、いくつかの店で腕を磨いた後、昭和53年に大阪・三ツ寺筋で店を構えた。その後、昭和62年に現在の東心斎橋へ移転した。
客に同じ料理を出さないのは、素材の特徴や変化、客の好みを十分に考えているから。走り、旬、名残では、味や食感が変わる。
旬はその素材が最高の持ち味を発揮するのに対し、走りや名残は、味は旬に及ばないものの、訪れ、去り行く季節を感じさせてくれる。その変化に合わせ、料理の仕方も変えている。
初めての客には会話からどんなものが好みかを聞き、食べる姿からも好みを探ることで、料理を変えていくという。だから、一つたりとも同じものは出ない。
だが意外にも、素材の産地に対するこだわりはないという。ただ、自分で食べてみて納得しなければ使わない。「果物の味がする野菜などが重宝がられているが、トマトはトマト、きゅうりはきゅうりの味がしていればいい」と奥田さん。
松茸(まつたけ)なら香りと食感を生かすように、素材の特徴を殺さず、引き立てる。飾らず余計な足し引きをしない「生成(きな)り料理」が、梅市の味だ。
そんななかでも巽さんの舌をうならすのは、昆布(こんぶ)とかつお節でとっただしのうまさが表れる椀(わん)物。「刺し身は素材さえ良ければそこそこうまくなるが、椀はごまかしがきかない」と巽さんは話す。
広い厨房(ちゅうぼう)が一望できるカウンターに出される料理を、巽さんは素早く食べるという。
「一番うまい状態で出してくれた真剣勝負の一品。それを損なわずに食べるのが、料理人への礼儀」と巽さん。
それぞれの季節に姿を現した素材が一つの皿の中で出会い、それを一番良い間合いで出会った客が口に運ぶ。料理とは、まさに出会いであることを、この店は教えてくれる。(田村慶子)
梅市 大阪市中央区東心斎橋1丁目6の3ハイツ千年町2階 TEL06・6243・9126 営業時間は17~21時(日曜・祝日定休)。おまかせコース1万5000円から。
(2008年10月29日 16:35)
タグ:和食
Category:食べる人通う店
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