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関西スーパーマーケット社長 井上 保さん(61) (2)新入社員時代

モノづくりの現場知る

 入社した昭和44年当時は、まだ3店舗しかありませんでした。数少ない大卒新人として「本社教育生」となった私は、店舗を回って足りない商品を聞き、それをメーカーに発注する仕事を任されました。

 これは本当に勉強になりましたね。何がどれだけ売れているのか随時わかるわけです。当然売り場もうろうろしますから、商品内容や価格設定、陳列場所、商品の見せ方-といった売り場作りの基本を学ぶことができました。まだPOS(販売時点情報管理システム)のない時代です。「こうすれば物は売れるのか」というのが肌身で実感できました。

 1年ほどでメーカーから商品を仕入れる商品部に異動。豆腐やこんにゃく、漬物、パン、うどん、ハム、ソーセージなどを受け持ちました。取引の相手は町の小さなメーカーが中心です。毎日顔を出し、家族同様にかわいがってもらいました。

 出店を加速していた時期で、仕入れる量、種類とも右肩上がりに増えていました。ただ仕入れに際しては、モノづくりの現場を知るよう努めました。味や鮮度、品質、そして安全、安心に自信を持って商品を売るためです。豆腐屋で豆腐を作り、漬物屋で大根を漬け…とさまざまな体験をさせてもらいました。

 モノづくりの現場を知っておくべきだ、という考えは今でも変わっていません。このため平成12年からは、社員を宮崎県・えびの高原にある「720(なにわ)牧場」へ実習に行かせています。

 この牧場は牛肉の仕入れ先の1つです。生き物である牛を殺し、解体し、牛肉製品にして食べる-という一連の流れを見せることで、商品に対する思いが格段に深まります。見学後は、「一片の肉も無駄にはできない」と目の色が変わりますね。鮮度や品質などを見極める力も養われるので、一石で何鳥も得られる有意義な実習です。

 このほか、食品メーカーの工場見学などにも可能な限り行かせています。商品知識が深まり、モノづくりに対する考え方を知ることもできるからです。

 消費者に最も近い場所にいるわれわれ小売業者が生産現場に足を運ぶことで、食の安全、安心の確保にもつながるのではないかと考えています。

(聞き手 竹岡伸晃)
 

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