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ファンコム社長 松尾 光晴さん(43)(3)最初の商品

使う人の視点にこだわり

 「ファンコム」という社名にはFun Communication(楽しいコミュニケーション)という意味を込めました。障害者や高齢者に「人と人」「人と機械」の楽しいコミュニケーションを交わしてもらうための生活支援機器を提供したいと思ったからです。

 父親はテレビで野球を見るのが好きでしたが、筋委縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)で手が不自由になり、チャンネルを操作できなくなると、家族に「チャンネルを変えてくれ」と言ってました。そのうち話すこともできなくなり、何かを伝えようとしても、うまく伝わらず、周りも何をしてあげてよいのかわからなくて…。父親本人も周りの家族もつらく、コミュニケーションの大切さを痛感しました。

 父親にパソコンを使った会話補助装置を借りたのですが、操作が複雑で、支援する側にとっても設定や操作が難しく、不便でした。ファンコム設立から3カ月後の平成15年9月に発売した第1弾商品の「レッツ・チャット」は、徹底的に使う人の視点にこだわり、障害をもつ人や高齢者の生活が豊かになることを目指した携帯用会話補助装置です。

 自分の身体に合った入力スイッチをタイミングを取りながら「押す」「離す」を繰り返せば、文章を作成することができる仕組みで、言語障害と上肢障害の両方の障害を持つ方に適しています。これまでの「指で押す」タイプの装置と、パソコンに特殊なソフトウェアを組み込んだ「意思伝達装置」の間に位置する新しい装置といえるでしょう。

 《この年、このからだでレッツ・チャットと出合って、チャレンジ、いきがいをみつけた》

 発売後、全国からこうした手紙を何通もいただきました。脳梗塞で倒れ、会話のできなかった人にレッツ・チャットを渡すと、延々と文字を打ち始め、家族に感激されたことなど、こうした一通、一通が次の開発の励みとなっています。

 ただし、会社設立時にパナソニック側から言われたのが「15年上期中に製品を発売して売り上げを計上すること」。しかも当初はパナソニックの力を全く借りることができず、短期間でモノづくりを行ったため、コストダウンができませんでした。商品を売れば売るほど赤字となるという状況に陥り、本当に大変でしたね。

(聞き手 島田耕)

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