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【知と技のコラボ】関西情報サロン第3回会合の講師に聞く

 他の追随を許さないオンリーワンの技術、製品が、企業の競争力に大きく貢献する。景気低迷でオンリーワン技術への注目度が高まる一方、その獲得に悩む企業も多い。中堅・中小のものづくり企業を応援する産経新聞社の「がんばれ!!ものづくり日本 関西情報サロン」第3回会合では、高速水着の開発などで注目されている山本化学工業の山本富造社長がオンリーワン技術獲得の道のりを語る。また、大阪府立大学の吉田弘之教授は、廃棄物を宝の山に変える亜臨界水技術の将来性を示し、事業のヒントを提供する。

【参加者募集】第3回会合は6月22日 関西情報サロン

大阪府立大学教授 吉田弘之さん

大阪府立大学教授 吉田弘之さん廃棄物を宝にチェンジ

 紙や布、残飯などの有機性廃棄物は国内で毎年、3億トン以上も発生している。その半分ほどは焼却または埋め立て処分されており、最終処分場の確保も含め、自治体にとってその処分は大きな重荷となっている。大阪府立大の吉田弘之教授は、その厄介者を「宝の山に変えよう」と研究中。「大都市ほど廃棄物はたくさんあるが、実は原材料なんだと発想を変えるべきだ」と訴えている。

 吉田教授が手がけているのは、高温高圧で有機物を分解する力が強い「亜臨界水」で、廃棄物から有価物と燃料を取り出す技術の確立だ。

 「実際に現場で使ってもらえるものを作らないと意味がない」と、1日4トンの廃棄物を処理できるプラントを大学内に作って実証実験を続けている。

 魚のアラを投入すると、数分から30分で完全に分解され、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが含まれる油やアミノ酸、カルシウム、リン酸などの有価物を取り出せる。分解に使っているのは水なので、安全で無害。さらに残りカスからは発酵処理によって、天然ガスの主成分であるメタンガスが得られる。

 亜臨界水で前処理することにより、通常よりはるかに効率よくメタンを回収できるのが特長だ。

 府立大の構内では昨年春から、バイオメタンガス自動車が郵便配達車として走行している。市販車のタンクだけを交換した車で、ガソリンエンジンをそのまま使っており、排出物は水と二酸化炭素(CO2)だけ。おから2キログラムから1立方メートルのガスができ、これで車は20キロメートル走る。ガス1立方メートルはガソリン1リットル強に相当するが、製造費はわずか20円と格安だ。

 吉田教授は「今はおからを無償で受け取っているが、産廃として金を払ってもらえば、ガスはもっと安くできる」と胸を張る。環境関連のプロジェクトでは、補助金でようやく運営しているケースも目につくが「補助金なしでも利益が出るものにしなければ普及は難しい」との思いを強く持っている。

 既に下水汚泥を処理してリン酸などの有価物を回収、メタンガスを作る工程で利益を出すメドをつけた。現在、下水汚泥は重油などを使って焼却処分されることが多いが、これを亜臨界水で処理する方法に代えれば、CO2削減に大きく貢献することにもなる。

 ただ、実証実験中のプラントにも改善すべき点は多い。現在は汎用部品を使っているため「最適なポンプや破砕機、バルブなどの部品開発で、中小企業にお願いすることはいくらでもある」という。

 プラントの建設は、中小企業でも十分可能だ。「自分でベンチャー企業を作るつもりはないが、この技術はぜひ広めたい。事業化希望者には協力を惜しみません」と話している。(溝上健良)

 よしだ・ひろゆき 昭和49年大阪府立大助手、講師、助教授を経て平成7年から教授。18年から府立大資源循環工学研究所長を兼務。21年4月、社団法人化学工学会副会長に就任。専門は吸着や分離の技術で、13~15年に日本吸着学会会長を務めた。大阪府堺市出身。62歳。

山本化学工業社長 山本富造さん

山本化学工業社長 山本富造さん高い目標掲げ高機能実現

 独自のゴム合成技術を持つ山本化学工業(大阪市生野区)は、競技用の高機能ウェットスーツや健康用品「バイオラバー」などで事業を拡大している。山本富造社長は「他社を圧倒するオンリーワンの性能を身につければ競争を勝ち残れる」と信じ、製品の高機能化に取り組み続けてきた。そこにはいつも、「高い目標」がある。

 こんなエピソードがある。

 4年前。山本社長は海外の企業から、トライアスロン用水着素材の開発依頼を受けた。求められた水着の機能は「100メートルあたり0・3秒のタイム短縮」。上位選手が0・1秒単位の短縮のために懸命に練習を重ねる中、0・3秒短縮は難題だ。しかも同社にはそれまで、水着素材の開発経験はなかった。

 それでも、山本社長の関心はふりかかった課題の難しさより、依頼主の要求の設定に向いていた。0・3秒の短縮で圧倒的優位に立てるのか―。そこで山本社長は「5秒の短縮」を逆提案した。

 開発のあてがあったわけではない。当然のように開発は難航を極めた。それでも試行錯誤を繰り返せばヒントは見つかる。近所のスーパーの鮮魚売り場で魚を触った時、ぬめりにピンときた。魚が速く泳ぐことができるのはこのぬめりが関係しているのではないか。

 当時、高速水着の開発で重視されていた機能は水をはじく「撥水(はっすい)」だった。しかし魚は水をはじかずに、反対になじませる。山本社長はこの新しい視点から「親水性」の追究を決意、素材の開発を進めた。1年後。完成した新素材の水着は、100メートルあたり3秒以上の短縮を実現した。目標の5秒には及ばなかったが、依頼主の当初の要求である0・3秒は、軽々と超えた。

 この水着は今、世界のアウトドア競技用水着市場で6割のシェアを占める。

 山本社長は「実現不可能に見えても高い目標を立てなければ何も始まらない。それを実現させるため、開発には時間と資金を惜しむべきではない」と目標の重要性を説く。

 社員を惜しまず開発に投入するのもそのためだ。73人の社員のうち、開発専従はゼロ。全員が掛け持ちだ。「全員が常に開発に携わるという意識こそ大切」という。

 告知への努力も徹底する。バイオラバーなどのメディカル事業では、全国の病院や薬局などを会場にした説明会を年5000回開催している。

 開発の一環で大学との連携も模索している。今年3月には関西学院大学と共同で、科学映像を制作するベンチャー企業を設立した。携帯電話に画像付きの健康相談などのコンテンツを無料配信し、広告費で運営する考えだ。「企業の成長は、人の役に立つ製品をどれだけ世に送り出せるかにかかっている」。こう語る山本社長は、すでに次の目標への挑戦を始めている。(若狭弘)

 やまもと・とみぞう 昭和56年山本化学工業、59年から社長。独自技術の開発と応用に力を入れ、現在トライアスロン用ウェットスーツ素材で世界トップシェア。現在、健康事業の拡大にも取り組む。大阪市出身。50歳

 

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