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ハンバーグ 福田道雄 67 京都府木津川市

 「お父さん、今日ハンバーグでええ?」「うん。ええで」。わが家で時折ある会話。

 ハンバーグには今も胸にじんとくる思い出がある。

 山村の中学校を卒業し、たった1人大阪に就職した。会社はくぎや針金を地方に発送する問屋。トラックの積み下ろしが主な仕事だった。いつも空腹を抱えていたが、会社の先輩は優しかった。

 「みっちゃん、ちょっとつきあえ」と仕事帰りに食堂へ誘い、うどんや丼物を腹一杯食べさせてくれた。日曜には自宅に招いて家庭料理をごちそうしてくれた人もいる。

 そんなある日。道頓堀の洋食屋へ連れて行ってもらった。

 「みっちゃん、ハンバーグ食うか? うまいで」

 「はい」と答えたものの頭の中は「ハンバーグってなんやろ? 洋画でみたことのあるステーキみたいなものかな」。勝手な想像で胸をわくわくさせた。

 テーブルに運ばれてきた料理は、思っていたものとは違ったが、初めてのナイフとフォークの食事に戸惑いながら、一口食べてびっくり。「こんなうまいもん、世の中にあったんか」

 胸が熱くなった。道頓堀に映るネオンとフォークとナイフの食事。別世界の出来事に感じられた。

 「ハンバーグを毎日食べられたら、どんだけええやろうな」。そんな時代が本当に来るとは考えられなかった。

 キッチンからかちゃかちゃとタレをつくる音やハンバーグの焼けるにおいが流れてきた。

 「よっしゃ」。腰を上げ、ビールとグラス2個をテーブルに並べた。

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