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そうに違いない 田中邦彦 55 塾講師 和歌山市

 釣りに行って魚を持って帰らないと妻の機嫌はよろしくない。魚が大きいほど、数が多いほど喜ぶ。まぁ、いたって健全な反応であるわけだが、私は違う。

 「魚釣りに行って、魚を持って帰るような、そんな下品なことを俺はしない」と要らぬことを私が言うものだから、余計に頭にくるようだ。

 別に釣りが面白いわけではない。たいていは苦痛である。人に与えられる苦痛より、魚に与えられる苦痛の方がかなりましなので、人を避けて魚釣りをしているわけだ。ここのところが分かってもらえない。

 魚など、どうでもいいのである。

 いや、なまじ大きいのが釣れると、もっと大きいのが、なまじ数が釣れると、さらに多くの魚が欲しくなる。人間の性なんていうのは、地獄の餓鬼のようにできている。無限地獄なわけである。

 ならば釣りなどやめておけ、なんていう人は、人間がまったく分かっていない。人間はろくでもないとわかっていながら、苦しみながら、そういう行為をする存在なのである。

 とまぁ、そんなことを考えながら私は釣りをしているわけで、なまじ魚が釣れると思考の妨げとなって、うれしくない。

 こんなことを夕食のときに言うので、さらに妻はあきれかえる。

 必死の熱弁をふるう旦那を一言で切り捨ててしまう。

 「あほちゃう!」

 うん。そうかもしれない。いや、そうだ。
 

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