2010年1月10日
【がんばれ!!ものづくり日本】知と技のコラボ「効果的な企業連携」
1月27日開催の「がんばれ!!ものづくり日本 関西情報サロン」第8回会合は、テーマとして「効果的な企業連携」を取り上げる。海外企業との競争が激しくなる中、企業連携は中小企業が新たな市場を切り開くための不可欠な要素となっている。前例のない試作品開発や電気自動車(EV)の製造で連携を軌道に乗せている2人のキーパーソンを通じて、中小企業活性化の道筋を示す。
活気も運べ“ご当地EV”
電気自動車(EV)プロジェクトに取り組む 淀川製作所社長
小倉 庸敬さん
大阪府守口市の小さな工場の一角。淀川製作所の小倉庸敬社長(52)が目を輝かせながら取り組むのは、オリジナルの電気自動車(EV)の製作だ。
「私たちみたいな町工場でもできるのがEV。ご当地EVが町を彩れば、閉塞(へいそく)感から抜け出せるのではないか」と昨年6月、仲間とEV製作のプロジェクトを立ち上げた。
昨年春、仲間内での勉強会で、EV開発の実績がある京都EV開発(京都府城陽市)顧問の岡田実氏の講演を聞いたのがきっかけだ。話をきくとEVの構造は、ガソリン車ほど複雑ではないという。小倉さんのものづくりの原点は、子供のころにかまぼこ板や空き缶などで作ったクルマ。あこがれの自動車が自分でも作れるような気がした。
小倉さんらは産学交流の一環として、5年前に地元の学校の先生や地域の工場仲間と環境問題の研究会を設立。風力発電や太陽光発電の研究開発に取り組んだものの、思う成果は得られなかった。
「環境と地域活性化のために、EVで何かできないか」。岡田さんに相談すると、バッテリーや電装部品の供給を申し出てくれた。
オリジナルのEVだけに力を入れたいのはデザイン。知人の女性設計士に「女性の感性をカーデザインに生かしたい」と持ちかけ、快諾を得た。
こうして全体構想や組み立てを行う淀川製作所、デザイン担当の九創設計室(兵庫県尼崎市)、電装製作の京都EV開発(京都府城陽市)、さらに知人が経営する近畿刃物工業(守口市)に車体部品製作を依頼し、「あっぱれEVプロジェクト」が誕生した。
「大手自動車メーカーと同じEVを作っても意味はない」と考えた小倉さんらが、まずコンセプトとして定めたのは地域を走る「観光タクシー」。形は小型の3輪タイプとし、最高時速は40キロ。自然素材を原料に、関西の伝統産業でもある和紙、漆、竹などをふんだんに作った日本らしいデザインが完成した。
大阪府の地場産業に対する補助金の交付を受け、10月から製作を開始した。とはいうものの、小倉さんにとって自動車製作は初めて。デザインはあるが、ものづくりの基本の設計図がない。車幅を広げようとすると、バランスが悪くて傾く。デザインに合わせて大きいタイヤを使うために大きな車軸に取り換える。ひとつひとつ修正する。目標は、平城遷都1300年のイベントにむけ、3月に奈良で走らせることだ。
「今の人員態勢だと月10台ペースで作っていくのが理想」と話す。しかし、量を作って利益を得るのが目的ではない。「この取り組みが全国に広まれば、『守口市でしか売らない』というのも面白い。各地の中小企業が連携し、岡山だったら桃太郎カー、広島だったら紅葉まんじゅうカーというように、それぞれの町が“ご当地EV”で活気付いてほしい」とにこやかな表情で語る。
企業連携から生まれた小さなビジネスの芽は着実に膨らみつつある。
おぐら・のぶゆき 昭和53年淀川製作所。営業部門の責任者などを経て平成10年、代表取締役社長に就任。守口門真商工会議所常議員、社団法人吹田準倫理法人会幹事を務める。愛媛県出身。52歳。
技術の壁越える匠の集団
18社参加、世界の受注に応える 京都試作ネット代表理事
山本 昌作さん
薄板金属加工、レーザー溶接、プリント基板、樹脂成形、表面処理、めっき加工…。それぞれの専門技術を武器に、世界各国からの受注に対し、迅速に対応する匠(たくみ)の集団が京都を拠点に活動している。その名は「京都試作ネット」。18社の中小企業が参加し、総勢465人の技術者、600台の生産設備を機能的に連携させ、前例のない製品を世に送り出し続けている。
「試作品を完成させるには今、持っている技術の壁を常に乗り越えることを求められます。前を向く姿勢が技術を磨いていく。だからこそ手がける意味があるんです」
山本昌作代表理事(山本精工副社長)が重視するのは下請け体質からの脱却だ。平成13年7月に試作ネットを結成して8年。これまでの問い合わせは約2500件にのぼり、そのうち636件が成約。成約金額は約12億4千万円分にのぼる。オフィスで使用できる卓上サイズのプレス機や電気自動車(EV)の試作車「京都カー」、レーザービーム集合装置の主要部品など、これまで製造した製品は独創かつ実用的なものばかりだ。
注文しやすいように受け付けの窓口は一本化し、問い合わせには必ず2時間以内で返答するスピード対応を徹底している。「日本のものづくりは、量産に関して新興国に太刀打ちできない。ほかではまねのできない付加価値の高い製品を多品種生産できる態勢を整える必要がある」との思いを強く持っている。
試作ネットの活動は、個々の企業にとって技術力の向上だけでなく、メンバー企業と情報を共有することで取引先も拡大するという好循環を生んでいる。
ただ、会員企業はメリットのみを享受できるわけではない。年間60万円の会費のほか、ネットを運営するため事務局に人材を派遣しなければならないなど負担と覚悟が求められる。
仕事の割り振りは、技術力、実績によって決まるため、メンバーになったからといって必ず試作の注文をもらえるわけではない。「大事なのは発注に対応できる技術力とスピードを持っているかどうか。注文が来なければ、なぜ来ないのかを分析し、足りない点を改善することが大事なんです。なれ合いからは新しい技術は生まれません」
山本代表理事は「家業を継いでほしい」という親の頼みを受けて入社した自動車部品の下請け鉄工所をアルミ加工で高い競争力を持つ企業に変身させた。
鍵となったのがIT(情報技術)。工場で働く職人の技術をプログラム化し、データどおりに機械に生産させる管理システムを考案した。「HILLTOP(ヒルトップ)」と名付けたこのシステムを活用することで、新技術の開発といった創造性の高い仕事にマンパワーを集中することが可能になり、さらなる生産性の向上につなげている。
山本代表理事と同ネットのメンバーは「京都を試作品製造の一大集積地にする」という大きな目標を持っている。地域にしっかりと根をはり、新しい技術を取り入れ、ネットワークを拡大する。ものづくり中小企業が発展していくための一つの答えがここにある。
やまもと・しょうさく 立命館大学卒業後、昭和52年山本精工。工場長、常務を経て平成15年代表取締役副社長。京都試作ネットでは13年副代表理事、18年7月から代表理事。名古屋工業大学で非常勤講師も務める。島根県出身。55歳。
◇
【京都試作ネット参加企業】秋田製作所(オリジナル装置)▽植田機械(商社)▽川並鉄工(モデリング制作)▽京都試作工房(オリジナル装置)▽キョークロ(表面処理)▽クロスエフェクト(樹脂成形)▽コーシン(精密板金加工)▽高木金属(めっき加工)▽辻製作所(精密板金加工)▽名高精工所(精密加工)▽ナンゴー(精密機械加工)▽日双工業(三次元加工)▽衣川製作所(微細加工)▽富士精工(オリジナル装置)▽最上インクス(薄板金属加工)▽モステック(プリント基板)▽楽墨堂(ロボット開発)
関西情報サロン 27日に開催、ご参加を!
産経新聞社は、ものづくり企業を応援する「がんばれ!!ものづくり日本 関西情報サロン」第8回会合を1月27日に開催します。テーマは「効果的な企業連携」。試作品製作で連携する「京都試作ネット」の山本昌作代表理事(山本精工副社長)と、電気自動車製造に取り組む「あっぱれEVプロジェクト」の小倉庸敬(のぶゆき)代表(淀川製作所社長)を招き、連携を軌道に乗せるポイントについて語っていただきます。
【日時】1月27日(水)午後1時半~5時(午後1時、受け付け開始)
【会場】ホテルニューオータニ大阪(大阪市中央区城見1の4の1)宴会場
【参加費】3千円
【申し込み方法】メールで件名に「1月サロン参加希望」と明記し、氏名(ふりがな)、社名(ふりがな)、役職名、連絡先電話番号、会社の住所、事業内容を記入のうえ、サロン事務局(info-sogo@sankei.co.jp アドレスが変わりました)へ。問い合わせは「関西情報サロン」事務局(電話06・6633・9583)。
【締め切り】1月13日(水)。応募者多数の場合は抽選のうえ、当選者にメールで通知します。
(2010年1月10日 05:00)
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