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キリン・サントリー統合決裂 M&Aや海外に視線

 キリンホールディングスとサントリーホールディグスの経営統合交渉の決裂を受けて、両社の社長が8日午後、それぞれ記者会見し、新会社の経営方針や統合比率をめぐって溝を埋められなかったことが白紙化の原因との見方を明らかにした。両社は今後、海外を含む企業との提携や統合を検討する姿勢を示した。

 キリンの加藤壹康(かずやす)社長はこの日午後の会見で、断念理由について「統合新会社が公開会社として経営の独立性、透明性を担保することが基本と交渉してきたが、合意に至らなかった」と述べた。統合しても上場会社としての透明性が確保できないとの認識を示し、経営方針の考え方の隔たりが大きかったことを強調。

 新会社の統合比率に関して、加藤社長は「トータルの価値を適正に計算したもので(サントリーの創業者一族の資産管理会社である)寿不動産の持ち株比率を3分の1未満にするためではない」と語った。

 サントリーの佐治信忠社長も会見で、交渉打ち切りについて「理由は統合比率で(統合交渉では)考え方が違った」と説明。キリンの加藤社長が統合後の新会社の透明性について言及したことに関連し、佐治社長は「何をもって透明性がないというのか分からない」と反論した。

 今後の経営戦略について、キリンの加藤社長は「(サントリーだけではなく)絶えずオプションはあり、M&A(企業の合併・買収)や提携は成長戦略だ」と指摘。サントリーの佐治社長も「海外の会社と統合を検討することもあるだろう」との考えを示した。

勝ち組同士「単独でやれる」

 日本国内の市場が縮小するなか、世界の列強に対抗していける国際競争力の強化を目指した“理想論”は、あえなくついえた。キリンホールディングスとサントリーホールディングスの統合交渉は、統合比率やサントリー創業家の権利など、やっかいな課題を克服できないまま決裂。日本の食品業界を代表する両社の迷走ぶりは、業界再編の困難さを改めて示した。

■社員ばかにしている

 統合交渉には、最初から暗雲が垂れ込めていた。

 「もう会わん。交渉はやめや。これで、やめや」

 統合交渉が本格化した昨年11月下旬。キリンの加藤壹康社長と東京都内で会談したサントリーの佐治信忠社長は、キリンが提示した統合比率の提案に激怒した。キリンが提示した統合比率は、キリン1に対しサントリー0・5強だった。

 「統合比率が半分とはサントリーと社員をばかにしている。サントリーはそんな軽い会社ではない」。佐治社長は、会談の席を立った。統合交渉は一転、破談へと“歯車”が動き出す。

 サントリーが激怒したのは、同社に約90%を出資する創業家一族の存在があったからだ。佐治社長によれば、統合交渉前、サントリー創業一族の資産管理会社が、統合新会社に3分の1超を出資するという条件が加藤社長の間で事前了解されていたという。

 だが、実際の交渉でキリンが提示した案では、サントリー創業家の統合新会社への出資比率が3割を下回る。キリン側が、株主総会で買収などの重要事項を否決するには「3分の1超」の出資比率が必要だ。サントリー創業家一族は「キリンに裏切られた。一緒になる必要はない」と不信感を強めた。

 逆に、キリン側がサントリーの反発覚悟で強気の案を提示したのは、サントリー創業家に経営の実権を握られることを警戒したためだった。非上場会社のサントリーと違い、上場会社のキリンにすれば、サントリー創業家を他の株主より優遇しすぎるのは、「公平性の観点において株主や従業員など利害関係者から理解が得られない」(加藤社長)とも判断した。

■医薬事業が決定打

 両社の交渉は、キリンの医薬事業の切り離しを、サントリー側が統合の条件として求めたことで、完全に機能停止状態に陥った。

 結局、8日午前のトップ会談に決着が委ねられたが、無理に譲り合い、居心地が悪くなってまで一緒になるよりも、「最終的に交渉を終了することで合意した」(加藤社長)という。

 もっとも、両社が交渉を中止した背景には、足元の業績が堅調だという事情もある。平成21年12月期の連結経常利益は、ともに過去最高を更新する見込み。サントリーの佐治社長は「キリンと一緒にならなくても単独で十分にやっていけるだけの規模がある」と語り、キリンの加藤社長も「単独で成長できる態勢は整えてきた」と述べた。

 だが、たとえ国内の業界内で“勝ち組”だったとしても、肝心の国内市場はビール類の出荷が21年まで5年連続で過去最低を更新するするなど、縮むパイをめぐる過剰競争は激化の一途で、今後も生き残れる保証はない。

■開く海外勢との差

 海外勢との差も開く一方だ。20年12月期の最終利益は、キリンが801億円、サントリーは321億円。米ペプシコの5400億円、米コカ・コーラの約5300億円に比べ“蟻(あり)と象”のような開きがある。有力パートナーと組まなければ海外勢に取り残されるのは必至だ。

 「キリンとしてはM&A(企業の合併・買収)やアライアンス(提携)が重要な成長戦略と考える」(加藤社長)、「海外の有力食品会社との連携を考えたい」(佐治社長)。両社トップの視線は他社との連携に向かうが、大型統合が頓挫した今、どこまで再編機運を維持し、次の戦略に生かせるかは不透明だ。(今井裕治)

 

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