2010年3月11日
日本のカレンダーは不人気?
話が逆のようだが、日本のカレンダーをスペインの友人たちから毎年のようにもらう。
「これもらってんけど、使わへんから、日本人のノリコにあげるわ」(毎度ながら、マラガ人の話し方がわたしには関西弁に聞こえる)
折りじわなどがつかないよう苦心しながら、はるばる日本から持って来たであろう同胞の気持ちを思い、はじめの頃こそ、「せっかくもらったのに、なんで? 写真だけでもきれいやん」と言っていた。理由がいつも同じだとわかってからは、「はいはい、ほな、遠慮なく。ありがとう」ともらっておくことにしている。
友人たちが日本のカレンダーを使わない、使えない理由は、ほとんどが日曜始まりのものだから。
スペインのカレンダーは月曜始まりで、土日の2列が右端に並び、いかにも「週末」の感じがある。月曜日から金曜日の数字は黒、土曜日はグレーや青、日曜日は赤、という色分けは日本のものとそう変わらない。ルイスが使っている「学校年間カレンダー」は、週休2日制だから土日とも赤。ちなみにこの学校カレンダー、学年度に合わせて9月始まりの6月終わりで、7月、8月が、ない。夏休みで学校がないとはいえ、なにも「はみご」にせんでも‥‥‥。変なところで合理的、というべきか。
さて、日曜始まりのものでも、日曜日はたいてい赤だから、左端が日曜日だと頭ではわかっている。それでも、左端が月曜日と刷り込まれているスペイン人は、ついつい見間違えてしまい、勘違いするからあかん、使えへん、となるらしい。
それに、金曜夜から土日にかけての「週末」単位の予定を書き込むときに、日曜始まりのカレンダーだと、土日がカレンダーの左右両端に分かれてしまい、ひと続きで書き込めないのも、実際、不便である。
「風景写真などビジュアルが美しい日本のカレンダーは、外国人へのお土産に喜ばれる」と、わたしも昔どこかで聞いたことがあり、プレゼントしたこともあった。確かにビジュアルは喜んでもらえるが、使い勝手が悪いのはあかんわ、ということが、逆の立場になってみてわかる。
わたし自身は、スペインで暮らしてはいても、日本とのやりとりもあり、日本の祝日が確認できるカレンダーは重宝する。用済みとなってからも、和風の絵や美しい写真などを、カード、しおり、ブックカバーなどに仕立てて、人にあげている。プレゼントというほど大袈裟なものではないが、ちょっとした和のテイストが思いのほか喜んでもらえる。
スペインの祝日は、国が定めた日のほかに、各自治州が定めた日がある。各州の祝日すべてを印刷してあるカレンダーもあれば、国の祝日しかないものもあり、知らないとちょっとややこしい。
たとえば、2月28日は「アンダルシアの日」で、アンダルシア州だけの祝日である。今年は日曜日と重なり、3月1日が振替休日だった。企業などは、この日1日だけ休みだが、その前の1週間を「セマナ・ブランカ(白の週)」といい、マラガ県では学校がまるまる休みになる。こうしたことは、普通のカレンダーではわからないことが多い。
カレンダーでスペインらしいと思うのは、聖人、聖母の名前が印刷されたものが多いこと。毎日だれかしら聖人の名が、日付の上や下に小さく印刷されている。ちょうど、日本のカレンダーに「仏滅」「大安」と六曜が入っているような感じだ。
スペインには、誕生日だけでなく、その人と同名の聖人の日や、その命名にちなむ聖なる日にお祝いを言う習慣がある。ペペ(ホセの愛称)は3月19日、インマやコンチ(「無原罪のお宿り」を意味するインマクラーダ・コンセプシオンの愛称)は12月8日、カルメンは7月16日と、だれもが知っているメジャーな日は、特にその傾向が強い。産まれた日の聖人名を名づけるとは限らないので、「ペペの誕生日はいつか知らんけど、今日はサン・ホセの日やから、お祝いの電話しとこか」といった具合で、ある意味便利だ。
カレンダーといえば、地元の日系企業でスペイン人に日本語を教えていたとき、興味深いことに気づいた。日本語で「1月、2月‥‥‥」と言うとき、それがスペイン語の何月にあたるのか、生徒たちにとってすぐに結びつかない月があるのだ。生徒はみんな頭脳明晰な技術者たち。わりとなめらかに日本語を話す人でも、こちらが「9月」と言うと、指を折りながらスペイン語の月名を小声で唱えていて、なんだか可愛らしかった。
スペインでも、略式として月を数字で書くことはある。日本とは逆の「日月年」の順で、たとえば、「2010年3月11日」は「11-3-2010」である。それでも、「月によっては、一瞬考えてから書く」と、ルイスも言う。1年の始まりと終わりの1月と12月、そしてまん中の6月はすぐにわかるが、それ以外はちょっと数えることもあるそうだ。
「人生は楽しまなくっちゃ」が国民的モットーのスペイン人。日本のカレンダーがうまく使えなくても、シエスタをはさんで1日を2回生きると言われても、1年は同じように365日。なのに、時間の流れ方がここでは確実にゆったりしている。 (齋藤慎子)
★ 「ケソ」とはスペイン語でチーズのこと。「味噌とケソ。音の響きもさることながら、発酵食品どうし、これがなかなか相性よし。毎日、和西折衷ごはんを食べて暮らしている日本人とスペイン人カップルの日常の断片を、アンダルシア的に(不定期に、のほほんとマイペースで)お届けする予定。味噌やケソのように熟成できるかどうか、乞うご期待?!」(齋藤さん)
【筆者略歴】齋藤慎子(さいとう・のりこ) 新潟県生まれで、おもに奈良県育ち。同志社大学文学部卒業後、大阪での広告会社勤務などを経て2003年からスペインのマラガ県在住。現在、ビジネス書や自己啓発書を中心とする翻訳のほか、“国際カップルよろず相談”に乗ることも多い。スペイン版江戸っ子であるマドリッ子「ルイス」の妻として主婦業も一応こなしている…つもり。
主な訳書に『カオティクス』(フィリップ・コトラー、ジョン・A・キャスリオーネ共著、東洋経済新報社)、『ザ・コピーライティング』(ジョン・ケープルズ著、神田昌典監訳、依田卓巳共訳、ダイヤモンド社)、『マンデー・モーニング・リーダーシップ』(デビッド・コットレル著、東洋経済新報社)、『バルタザール・グラシアンの賢人の知恵』(バルタザール・グラシアン著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『究極のセールスレター』『究極のマーケティングプラン』(いずれもダン・ケネディ著、神田昌典監訳、東洋経済新報社)など。
(2010年3月11日 05:00)
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