2010年6月 1日
【知と技のコラボ】エコシティ化進む学研都市
京都、大阪、奈良の3府県にまたがる関西文化学術研究都市で電気自動車(EV)や太陽光発電パネルなどを備えたエコ住宅を普及させ、日本を代表する「エコシティ」とするプロジェクトが進行している。研究、住宅、産業など多面的な性格を持つけいはんなの特徴を生かした実証実験を展開し、新しいライフスタイルの創造と発信を目指している。産経新聞社も昨年9月に中小製造業を応援する「がんばれ!!ものづくり日本 関西情報サロン」のテーマとして学研都市を取り上げて以降、関西のものづくり産業の拠点の1つとして発展するよう継続的に応援している。
■EV普及のインフラ整備着々
3月下旬、学研都市の中心地にそびえるオフィスビル、イベントホール、ホテルの複合施設、けいはんなプラザ(京都府精華町)の一角にEV用の急速充電器が設けられた。
電池容量の8割を10分程度で充電できる最新タイプで、無料で使用可能。三菱自動車のEV「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を公用車として使う京都府中小企業技術センターの松永行利けいはんな分室長は「短時間で充電できる設備ができたのはありがたい。安心して走り回らせることができます」と笑顔を見せる。
急速充電器が設けられるのは、けいはんなプラザだけではない。設置主体の京都府は今後3年間で、学研都市内の商業施設や公共施設に最低でも5基の急速充電器を設置。一般家庭に対する充電器の設置も後押しする。
また、プラザに入居する研究機関や企業などを対象にしたEVのカーシェアリング、シンポジウム、学校などへのEVの出前授業などを企画するほか、EVの関連情報やロードサービスなどを提供するセンターの新設も検討している。「EVを普及させ、学研都市の主要な交通手段として定着させていきたい」と中村重夫文化学術研究都市推進室長は力を込める。
■エコ生活のショーウインドー
住宅、ビルでもエコ化の動きは活発だ。精華町内では太陽光発電パネルを標準装備した総戸数約300戸の「環境共生タウン」の建設が進む。
各住宅は太陽光発電パネルだけでなく、LED(発光ダイオード)照明、高断熱材、蓄電池など最先端の設備を導入。同様の計画は京田辺市内の同志社山手地区でも検討されており、創エネ、省エネ、畜エネ機能を備えた住宅群がもたらす波及効果を多角的に検証できるエリアが相次いで誕生する。
エコ住宅の整備に先駆けて、けいはんなプラザも太陽光発電パネル、LED照明、太陽熱温水器などを装備した「エコショーウインドー」として改装される。プラザを運営する株式会社けいはんなの三田康明常務は「プラザをエコシティの象徴として情報発信し、新エネルギー関連の企業を呼び込むランドマークにしていきたい」と話す。
■都市まるごとで実証実験
今年4月には経済産業省が学研都市地域を「環境・エネルギー大国戦略」を具体化するための次世代エネルギー・社会システムの実証地域として指定した。さまざまな実証実験が進めやすくなり、エコシティ化を推進する追い風となる。
なかでも注目を集めているのがエコ住宅とEV、次世代送電網として注目を集めるスマートグリッドを結びつけ、効率的な地域のエネルギー運用システムを構築するための実験だ。
学研都市には、ITや環境分野における最先端の研究機関が集積しているだけでなく、関西でも有数の住宅都市として発展し、住民の自動車保有率も高いという特徴がある。「都市まるごと」でエコ住宅やEVを普及させる環境が整っていることは、未来のライフスタイルを具現化する大きな強みとなっている。
実証実験の推進とEV、新エネルギーといった環境関連の産業を誘致するために、京都府、関西経済連合会、関西文化学術研究都市推進機構、京都大学、京都府立大学、同志社大学などは、近くけいはんなエコシティ推進会議を結成し、実験による成果の技術移転や事業化支援、競争的資金の獲得支援に乗り出す。
実験を実験だけに終わらせることなく、いかに新産業の創出や活性化につなげていくか。学研都市の挑戦が結実するかどうかは、関西における新産業育成の大きなポイントになうそうだ。
【写真説明】関西学研都市のけいはんなプラザ前広場に設けられた電気自動車の充電スペース=京都府精華町
新産業創出交流センター 二宮清センター長に聞く
“エネルギーの地産地消”目指す
さまざまな新産業のプロジェクトが動き出す関西文化学術研究都市。学研都市の産業振興を担う新産業創出交流センターの二宮清センター長に今後の展望を聞いた。
――次世代エネルギー・社会システムの実証実験とは
「太陽光発電や燃料電池、バイオマス発電に加え、電気自動車(EV)も蓄電池として活用する次世代のエネルギーシステムを構築するには、IT(情報技術)を駆使し、需要に合わせて電力を安定的に供給するスマートグリッドが鍵を握るようになる。今年度から実施する実証実験は、このスマートグリッドを活用して電力会社からの系統電力の供給と地域や家庭で発電される新エネルギーが相互補完し合う“エネルギーの地産地消モデル”を確立することが目的だ」
――今後の展開は
「実験を通じ、けいはんなエコシティ推進プランを具現化するとともに、この分野に関心を持つ企業や大学に学研都市に進出してもらえるようにしたい」
――IT分野での注目プロジェクトについて
「製造業はハード主体のものづくりに加え、ソフト主体の知恵づくりも加速されてきた。そこでは『組み込みソフト』が重要な役割を担う。学研都市の研究機関の約35%はIT関連で世界的にも高い評価を受けており、画期的なソフトを生み出すことができる条件がそろっている。組み込みソフト分野で、産学連携やビジネスマッチングを積極的に行い、3年以内に海外を含め10社以上の企業を誘致したいと考えている」
――バイオ分野での新しい動きを教えてください
「大阪府高槻市の京都大学大学院農学研究科付属農場が木津中央に移転してくるのは追い風となる。学研都市にはバイオ分野で高い実績を持つ研究機関が集積しており、今後、ITを駆使した新しい植物工場の開発などをテーマに活発な産学官連携が期待できる」
――「がんばれ!!ものづくり日本 関西情報サロン」についての感想を。
「ビジネスに役立つ情報提供だけでなく、ものづくりに関連するさまざまなプロジェクトを後押ししている姿勢を評価したい。この流れを持続するとともに今後の関西の産業を背負って立つ人材の育成にも取り組んでほしい。国の経済成長戦略と連動する形でテーマを設定してもおもしろいと思う」
にのみや・きよし 昭和59年ダイキン工業。情報システム部長、電子技術研究所長、常務などを経て平成18年顧問。21年7月に関西文化学術研究都市推進機構理事、新産業創出交流センター長に就任。工学博士。66歳。大阪府出身。
(2010年6月 1日 09:18)
タグ:がんばれ!!ものづくり日本, 知と技のコラボ, 関西情報サロン, 電気自動車, EV
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