2010年7月 2日
【知と技のコラボ】27日に第11回関西情報サロン開催
航空機産業参入
27日に開催する「第11回がんばれ!!ものづくり日本 関西情報サロン」は、「航空機産業と中小企業」をテーマに取り上げる。最先端の部品や素材を結集し、ものづくりの頂点といわれる航空機産業は世界的に急成長が期待されている。航空機は徹底した品質管理と精度を要求されるだけに、この分野の2人の先駆者は、高い技術力を持つ日本の中小製造業が実力を発揮できる産業と指摘している。
高い技術力の証明に
川崎重工社友 榊達朗さん
榊達朗さんは川崎航空機に入社以来、約半世紀に渡って航空機産業に携わってきた。
昭和48年には、合併先の川崎重工業から複数の航空機製造メーカーで構成する民間輸送機開発協会(CTDC)に出向。在職中、約5年間、米シアトルのボーイング社に派遣され、当時の最新鋭機「ボーイング767/YX」の日米共同開発に携わった経験を持つ。
川崎重工業退職後も、国内の航空機産業発展のため尽力。近畿経済産業局の要請を受けて、関西における航空機産業の活性化プロジェクト(関西国際航空機市場参入等支援事業)にも協力している。
「中堅、中小企業が航空機産業に参入するのは簡単ではない。だが、航空機分野で実績を作ることは高い品質の製品を作ることができるという技術力の証明につながる。さまざまな波及効果が期待でき、挑戦する意義は十分にある」と、その可能性を訴える。
中堅、中小企業が航空機産業への参入を目指す上での最大のメリットは、市場の成長力にある。日本航空機開発協会によると、世界の運航機数は現在の約1万7200機から年後には2倍の約3万5700機に増加すると予測されている。退役機の補充を含め2万9千機の新規需要があり、年間あたりの平均新規需要は約1450機。現在の生産機数と比較して約20%増加する見込みだ。
参入には当然のことながら技術が求められる。航空機は機体、エンジン、装備品といったさまざまなシステムを複雑に組み合わせたハイテク集合体で、高度1万メートルの極限の環境下で使用されるため、ひとつひとつの部品に厳しい設計基準が設けられているためだ。
航空宇宙分野の品質マネジメント規格「JISQ9100」のほか、溶接、熱処理などの特殊工程に適用される「Nadcap」といった認証を取得するだけでなく、「大きな利益が見込めなくても長期間にわたって部品を供給し続ける責任と覚悟も求められる」と強調する。
既存企業との競争に加え、ベトナム、メキシコ、東欧といった新興国も航空機産業に力を入れており、コスト、品質面での厳しい競争にもさらされる。
航空機産業は、素材、部品、装備品、機体に至るピラミッド型で形成され、供給ルートは複雑だが、参入の間口は広い。
参入可能な分野としてエンジン関連部品、機体・装備品関連部品、製造、整備用の装置、内装品向け部品などがあり、総部品点数は200万~300万点におよぶ。このため「自社技術の得意分野をしっかりと分析した上で、参入分野を決める必要がある」という。
参入を成功させるキーワードは「熟慮速攻」だ。榊さんは「需要の拡大を見越して5年以上かけて戦略を練り上げる必要がある」と話した上で、「『より安全に、より快適に、よりエコに』が航空機開発のトレンドとなる中で、新素材や新技術を求める流れが加速している」と述べる。
そして最後に、こう指摘する。
「関西には技術を持ったものづくり企業が多い。いかに航空機メーカーのニーズを把握し、外部と効果的な連携を結ぶとともに目を世界に向けたグローバルな視点もポイントになる」
さかき・たつろう 大阪大学工学部機械工学科卒。昭和31年川崎航空機。同社が川崎重工業と合併後、航空業務部長、岐阜工場長、取締役航空宇宙事業本部副本部長などを経て平成5年6月から現職。日本航空機開発協会常務理事なども務める。兵庫県出身。77歳。
一貫生産体制で差別化
寺内製作所社長 山本賀則さん
一般産業機向けの事業を縮小し、より高い品質と精度が求められる航空・宇宙分野に経営資源を集中する。
大胆な選択と集中を行い、航空機産業界で存在感を高めているのが、大正2年に京都で創業した部品メーカーの寺内製作所(京都市伏見区)だ。山本賀則社長は、平成14年6月の就任以降、世界の航空機産業の発展を見越し、長期的な視点で経営戦略を構築し、実行してきた。
同社は戦前、海軍や陸軍航空機用のねじを生産するなど早くから航空機部品を手がけていた。しかし、戦後は建設機械、重電機器、業務用空調機などの一般産業機械向けボルト・ナットを中心に生産してきた。
航空機部品への特化を決断したのは平成13年8月。不況が長期化し、一般産業機向けの部品は需要が減るだけでなく、発注者からのコストダウン要求が厳しくなっていたことが背景にあった。
当時、取締役だった山本社長は「価格のたたき合いに巻き込まれるより、もともと強みを持っていた付加価値の高い航空機用部品に特化する方が、活路を切り開くことができると判断したんです」と振り返る。
だが、決断直後に、米国で航空機を使った「9・11同時多発テロ」が発生。再発への懸念と対策強化から世界の航空需要は一気に落ち込み、航空機の生産需要も急減した。いきなりの逆風だったが、山本社長は当面の収益悪化を覚悟した上で人員整理は一切行わず、需要の回復期に備えて体制を整えた。
危機を乗り切り、航空機メーカーからの受注を回復する大きな武器となったのが、材料調達から熱処理、表面処理などの特殊工程、検査までを単独でまかなう一貫生産体制だ。設計、品質保証、工程管理などの間接費用が増加することは大きな負担だが、発注者の利便性は高く「ほかの部品メーカーと差別化を図り、取引先を拡大する上で役立っている」(山本社長)という。
体制を支えているのが高度な品質管理システム。昨年完成したばかりの新工場をはじめ、全工程にパソコンとデータ読み取り用のバーコードリーダーを配置するなどシステム化を推進し、約3割の社員を検査、品質保証、生産管理にあてている。
検査完了後、品質記録は一定期間保管し、重要度の高い部品の記録は永久に保管している。材料の調達でもシステム化を進め、ロット別の在庫管理だけでなく、使用量による部品の必要時期をコンピューターで予測し、そのデータによって発注量や発注先を決定している。
航空機に携わる部品メーカーは、長期にわたって高い品質の部品を供給し続けなければならない責任を負う。そのために不可欠なのが先をにらんだ経営計画だ。
山本社長は、17年に技術、設備、工程、顧客、教育、マーケティングの各分野ごとに、社員と議論を重ねた上で、中期経営計画を策定した。その後、業績は右肩上がりで、航空機部品の売上高の伸びは策定前と比較して20%増となった。
「重い責任は伴うが、それ以上に誇りとロマンを持って仕事に取り組めるのが航空機産業の魅力」と語る山本社長。航空機部品のものづくりを通じ、「小さくてもキラリと輝く企業」に育てていきたいという思いを強く持っている。
やまもと・しげのり 同志社大学工学部卒。昭和48年寺内製作所。航空機部品の製造部門担当などを経て平成8年取締役。14年6月から現職。兵庫県出身。60歳。
ものづくりの技術を次代へ 事業承継支援
中小企業が抱える深刻な問題の一つに、事業承継がある。経営者の高齢化が進む中、後継者が確保できないなどとして廃業する企業も少なくない。すぐれた技術を持っていても、グローバル化の進展などにより経営環境が激変し、事業の将来展望を描けないことが承継を断念する要因となっているという。
東野修次弁護士は「廃業すれば、貴重な技術は消えてしまう。このままでは日本の大きな武器だったものづくりが衰退していく」。こんな危機感を持つ関係者は少なくない。
中小のものづくり企業が集積する大阪で、問題に直面する企業をサポートしようとする動きが出ている。
事業継承に取り組む東野修次弁護士(大阪)らが社会保険労務士、弁理士、会計士、税理士らさまざまな分野の専門家と連携。法律面だけでなく、税務や労務など幅広い問題に対処できるネットワークを作り、単に事業継承を請け負うのではなく、企業が持つ技術の新たな活用法を見いだして他分野への進出もサポートしていくという。
東野弁護士は「中小企業が苦労を重ねた末に産み出してきた技術を次代にどう受け継がせていくか。『ものづくり日本』が取り組むべき喫緊の課題だ」と話している。
【参加募集】 「第11回がんばれ!!ものづくり日本 関西情報サロン」
(2010年7月 2日 06:00)
タグ:がんばれ!!ものづくり日本, 同志社大, 大阪大, 航空機産業, 関西情報サロン
Category:がんばれ!!ものづくり日本, ビジネス, 当番のオススメ
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