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【植物工場の秘密】(下)社会貢献につながるシステム

 来場者数が3千万人を突破した中国・上海国際博覧会(上海万博)。大阪府・市が出展する「大阪館」では大阪府立大学の植物工場がモデル展示され、世界中の関心が集まっている。

 過去、万博では10~20年後に普及する最先端技術が披露されており、「植物工場は今回注目すべき未来技術のひとつだろう」(関係者)と指摘する。

 「植物工場の研究を20年やっているが、ようやく世の中が動き出した。国も本腰を入れ始めた」。大阪府立大大学院の村瀬治比古教授は強い口調で話す。

 堺市の同大中百舌鳥キャンパスでは、来年3月までに「植物工場研究センター」が完成予定。ここではレタスやハーブ、アイスプラントなどの野菜を栽培する。延べ床面積約2千平方メートルで、「これだけの規模の施設は全国にもない」と村瀬教授は胸を張る。

 同センターは2棟で構成される。1棟は空調や照明などの技術研究を行い、経済産業省の「先進的植物工場施設整備事業」に採用された。もう一方は実際の栽培技術を開発する棟として、農林水産省の「モデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業」として支援を受ける。

 縦割り行政が建設計画に反映された形だが、両省は局長レベルの私的諮問機関「農商工連携研究会」の下に有識者による「植物工場ワーキンググループ(WG)」を置き、4回にわたる会議を開催。平成21年度補正予算で植物工場支援費として、両省合わせ計約150億円を計上した。同センターの計画は「農商工連携の象徴」(村瀬教授)として動き出したわけだ。

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 同WGによる昨年4月の報告書は、「3年後に国内の植物工場を現在の約50カ所から150カ所まで増やす」ことを目標に掲げた。

 同時に植物工場には、生産設備が高コスト▽現状で栽培できるものが主に葉物野菜などに限られる▽専門技術の人材が少ない-など多くの課題があることも指摘した。

 LED(発光ダイオード)や水循環システムなど植物工場の設備は高価で、資金不足から撤退する企業も少なくない。栽培した野菜の販売を広げるためにも、低コスト化は不可欠だ。報告書でも「植物工場の野菜の重量あたり生産コストを3年後に3割縮減する必要がある」とした。

 しかし、村瀬教授はこう強調する。

 「植物工場の課題は技術改良や人材育成で解決できる。農業が直面する危機に比べれば小さい」

 国内の農業の担い手は高齢化し、荒れた農地を再生させることは難しい。日本の食糧自給率が41%(20年度、カロリーベース)にとどまっていることを念頭においた発言だ。

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 植物工場は食糧問題を打開するだけではなく、高齢者や障害者に安定した就労の場を与え、生きがいにつながる社会保障の面からも注目されている。

 農業だけでなく、社会貢献にもつながる植物工場システムの実現-。これが村瀬教授の目指す植物工場の未来形で、「社会の仕組みを変えることは難しい。技術で対応することなら、もっと簡単にできる」。

 大阪府立大は、来年度から植物工場のための新しいカリキュラムの導入を検討している。「機械にも植物にも精通した専門家」を育成するのが狙いだ。こうした動きは今後、他の大学や公的研究機関、企業の間で広がるのは間違いない。

 植物は光と水と必要な栄養素を与えれば育つ。その強い生命力が、人間の新しい未来を開いてくれるかもしれない。

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 この連載は牛島要平が担当しました。
 

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