2010年7月29日
【おいしい日本・味わい紀行編】隠岐牛と海の幸
絶品つめこんだ食の宝庫
島根半島の北東40〜80キロの日本海に浮かぶ隠岐諸島。隠岐といえば、その昔、後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流された島で、何となく寂しい島というイメージを持っていた。だが、初めて訪れた隠岐は雄大な大自然の恵みを受けた「食の宝庫」、食いしん坊にはこたえられない島なのだった。
“幻の黒毛和牛”といわれる「隠岐牛」は、ミネラルたっぷりの潮風と飼料、ストレスの少ない大自然で育った高級品。隠岐牛を食べることができる焼肉店「勇花理(ゆうかり)」は創業56年の「有限会社おき精肉店」の直営で、地元の人からも観光客からも愛される人気の店だ。
隠岐牛の特製ロース1枚(200グラム前後)の、見事な霜降りと色鮮やかな赤のコントラストに、牛肉に目がない私はうっとり。焼肉用にカットされた分厚い切り身の両面をほどよく焼いて、ほおばる。歯が要らないほどやわらかく、口の中に肉のうまみが広がる。文句なしに「うまい!」。
「隠岐牛」と呼べるのは、隠岐で生まれ育った牛だけ。島では年間約1200頭の子牛が生まれるが、コストの関係で島内で肥育されるのはこのうちの1割程度。いったん東京へ出荷し“逆輸入”するので、島の人たちにとっても貴重品だという。女将の村上豊子さん(54)は「隠岐牛は甘みがあって、やわらかい肉質が特徴です。昔は普通に食べていたんですけど、今はなかなかね…」。
一方、隠岐で生まれ、本土の奥出雲で育った牛を「潮凪牛(しおなぎぎゅう)」といい、こちらは肉質も申し分なく、隠岐牛よりは安い。店ではどちらも賞味できる。精肉店直営とあって、新鮮なホルモンも人気だ。
村上さんは、隠岐〜伊丹のジェット便就航5周年の記念に「潮凪牛めし」(隠岐空港で販売中、税込み千円、8月29日まで)を作った。「食材はすべて地元産」というこだわりの弁当で、かなり好評だという。
さて、四方を海に囲まれた隠岐は、もちろん魚介の宝庫でもある。季節ごとに採れる海の幸を堪能するため食事処の「味乃蔵」を訪れた。アワビ、ウニ、サザエはもちろん、白イカも有名。身が透き通ったイカは甘みが強く絶品だ。
店の壁には有名人のサイン色紙がずらりと並び、こちらも地元、観光客ともに人気の店だそうだ。
大自然がはぐくんだ食材を、絶景に囲まれていただく。最高に贅沢(ぜいたく)な時間を過ごした。島の人たちの明るい笑顔と人柄にも癒やされた。日本人がずいぶん昔に忘れてしまった何かがこの島にはある。そう思った。
(文 杉山みどり)
雄大な景色、多様な植物魅力
雄大な大自然の景色も隠岐の魅力だ。とにかく、どこに行っても絵になる。
数ある絶景ポイントの中のひとつ、隠岐の島町の北西に位置するローソク島は、高さ20メートルのろうそくのような形をした奇岩。夕日が先端に重なると、まるでろうそくに火がともったように見える。遊覧船「しゃくなげ」の船長、福浦清貴さん(57)は、季節ごとに変わる太陽の位置を計算して、“ろうそくに火がともる瞬間”を乗客に見せるよう船を操舵している。
また、島には北方系、南方系、高山性、大陸性…とさまざまな植物が共存しており、興味深い。「日本の滝百選」「全国名水百選」に選ばれている「壇鏡(だんぎょう)の滝」は、壇鏡神社が祀(まつ)られている信仰の滝で、滝の裏側から眺めることができる珍しいスポットだ。
隠岐諸島は昨年10月、「日本ジオパーク」に登録され、現在は「世界ジオパーク」登録に向けて活動中という。隠岐の環境を保護することは、日本の財産を守ることにつながる。隠岐の島町・観光商工課の吉田隆さん(47)は「県外からの賛同者、協力者が増えて、本当にうれしいです」と話している。
≪アクセス≫
伊丹〜隠岐JAL直行便で約50分。「とって隠岐(おき)の島へござらっしゃい!!キャンペーン」JAL伊丹〜隠岐線2回搭乗で、「隠岐牛サーロイン(200グラム×2枚)」が抽選で当たる。詳細はJALのHP(http://www.jal.co.jp/area /okijet/)で。
≪メモ≫
佐々木家住宅 寛政4年に建てられた隠岐最古の木造住宅。管理をしている吉田幸二さん(63)が楽しく案内してくれる。予約制で田舎料理の昼食も楽しめる。(電)08512・2・1290。
乳房杉 樹齢約800年の巨木で大小24個の乳房状の根が垂れ下がっている不思議な木。周囲は夏でも涼しく、神秘的な雰囲気が漂う。
焼肉店「勇花理」 隠岐の島町城北町243。(電)08512・2・3543。隠岐牛特製ロース1枚3980円(税込み)など。
食事処「味乃蔵」 隠岐の島町西町八尾1の16。(電)08512・2・3975。味乃蔵膳3150円(同)など。
食堂 さざえ村 隠岐の島町中村1541の3。(電)08512・4・0611。さざえのつぼ焼き(税込み300円)や、さざえ丼(同650円)などが名物。
(2010年7月29日 16:21)
Category:暮らしと文化
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