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【知と技のコラボ】3D映像、センサー技術と中小企業

「がんばれ!!ものづくり日本」用ロゴマーク 9月27日に開催する「第12回がんばれ!!ものづくり日本 関西情報サロン」は、テーマに「3D映像、センサー技術と中小企業」を取り上げる。先進的なIT(情報技術)分野の研究に取り組む情報通信研究機構(NICT)と、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の研究者は、関西の中小企業の技術力を高く評価し、3D映像、センサー技術を生かした画期的な新製品の開発に大きな期待を寄せている。

行動データで仕事効率化  

国際電気通信基礎技術研究所 野間春生さん
 

 電気通信分野の先進的な研究に取り組んでいる「国際電気通信基礎技術研究所」(ATR、京都府精華町)。知能ロボット工学の研究部門に所属する野間春生・知識応用研究室長は、腕時計サイズのウェアラブル(着用可能)センサーと、センサーを使ったネットワークシステムの開発、実用化に力を入れている。

 「日常行動をデータ化して分析できれば、仕事を効率化したり、ミスを減らすことが可能になる」。そんな発想から無線通信システムを搭載し、腕を上げたり下げたり、歩いたりといった日常行動のすべての動作をデータ化できるシステムの開発に乗り出した。

 活用先として最初に焦点をあてたのが、医療看護の分野。24時間体制で勤務シフトが組まれ、効率的かつ適切に業務をこなさなければならない看護の現場では熟練したベテランのノウハウを、経験の浅いスタッフに短期間で伝授できるシステムが切望されていたからだ。京都府内の病院の協力を得て、平成16年から実証実験に取り組み、5年間をかけて完成させた。

国際電気通信基礎技術研究所 野間春生さん 実験にあたり、当初は行動をデータ化することに看護師の一部で躊躇(ちゅうちょ)する声もあった。だが、行動が自動的に記録され、日誌を作成する負担などが軽減されたことで、患者と接する時間や看護師間でコミュニケーションを取る時間を増やすことができるといったメリットが実感できるようになると、前向きに活用するようになってくれたという。

 このシステムは、イベント会場や大規模小売店など効率的に大勢のスタッフを動かすことが必要な現場で効果を発揮。「センサーをつけているということを意識させることなく、自然な形で、その技術の恩恵を受けられる環境をいかに構築していくかが重要だ」

 センサーは、共同開発先の通信機器メーカー、ワイヤレステクノロジー(東京都大田区)が事業化し、基礎研究用として需要が高まっているほか、病院向けネットワークシステムは電気機器商社のたけびし(京都市右京区)が販路を開拓するなどビジネスチャンスは着実に広がっている。

 それ以外にもウェアラブルセンサーを活用する場は多方面に拡大している。

 そのひとつが自動車運転教習。この分野では京都府内の山城自動車教習所と共同で、ドライバーが運転する際の安全確認能力や運転技能を測定、評価するシステムを開発した。約3年にわたってタクシーやトラックのドライバー講習に使用したところ、事故削減につながる効果が生まれ、特にタクシードライバーに対しては講習前と比較して大幅な減少となった。

 この成果を受けてATRは、同教習所と共同出資でシステムを販売する新会社を平成21年2月に設立した。高齢者が免許を更新する際に義務付けられている講習に最適なシステムとして人気を集め、売り上げは順調に拡大。製品化に結びついた研究成果の成功例として注目を集めている。

 野間室長は「センサーを有効活用することで日常生活をより快適に、便利にすることができる。中小企業との連携の輪を広げることで新しい可能性を見つけていきたい」と話している。

 のま・はるお 筑波大学大学院工学研究科博士課程修了。平成6年国際電気通信基礎技術研究所(ATR)入所。触覚センサー、ウェアラブルセンサー、センサーネットワークなどの研究に従事し、平成21年4月から現職。44歳。愛媛県出身。

真の3Dから広がる用途 

情報通信研究機構 吉田俊介さん

 平面に映った映像を見ている人の脳内に対し、立体的に認知させるよう働きかける「3D(3次元)映像技術」。3D映像を楽しむことができるテレビや映画館が普及しつつあるが、立体感を生み出す右眼と左眼の「視差」を人工的に作り出す特殊なメガネをかける必要があったり、観察方向が限定されるなど、その技術はまだまだ進化の余地がある。

 情報通信研究機構(NICT)の超臨場感システムグループに所属する吉田俊介専攻研究員は、自然な形で、裸眼でも3D映像を見ることができる技術の開発に取り組んでいる。

 「何もないテーブルの上に立体映像が浮かび上がる。裸眼でどんな方向からでも見えるディスプレーを開発する」

 そんな発想から開発に着手し、関西の中小企業4社の協力を受けて今年7月に完成させたのが「fVisiOn(エフ・ビジョン)」。円錐(えんすい)型の特殊なスクリーンと96台にものぼる小型プロジェクターを搭載し、さまざまな立体映像を平面のテーブル上に浮かび上がらせることができる映像機器だ。

 「テレビや映画での立体映像は奥行きを再現しただけのいわば2・5次元の映像。どの方向から見ても立体に見える“真の3次元画像”を作ることができれば3D映像の可能性とビジネスチャンスはもっと広がるはずだ」

 立体映像を映し出すポイントの1つがテーブルに埋め込んだ円錐型の特殊スクリーン(上底20センチ、下底2センチ、高さ11センチ)。アクリル製の同スクリーンは0・4ミリのナイロン製の糸を幾重にも巻きつけてレンズとしての機能も持たせている。

 2つ目が、スクリーンの円周に沿って囲むように配置した大量のプロジェクター。スクリーンを囲むプロジェクターが一斉に中心点に向かって映像を投射すると、スクリーンの上底で直径10センチの球状の範囲で立体映像が浮かびあがる仕組みになっている。

 ナイロン製の糸を巻きつける加工技術や、プロジェクターの配置に工夫を施しており、光学製品や電子機器の製造を手がける中小企業の幅広い技術が導入されている。「実験段階だった技術を形にするには、さまざまな分野の高度なものづくり技術が必要で、企業同士の連携が大きなポイントだった」と振り返る。

 試作品のため、立体映像を見ることができるのは周囲120度の範囲。しかし、プロジェクターの数を増やせば、360度どの角度からも見ることができるようになる。

 期待される用途は、テーブルを囲んで行う会議や商談での活用のほか、建物や都市の設計、手術部位を患者に説明するなど医療での活用。装置が大型化できれば、競技場を立体的に再現することも可能という。

 今後の改良点として、画質の向上や巨大映像の再生、装置の小型化に取り組むことにしており、電子機器、光学機器、樹脂加工などを手がける企業に幅広く連携を呼びかけていく。情報通信研究機構 吉田俊介さん

 「意欲とフットワークを持った中小企業に技術やアイデアを提供し、新しい映像機器を世に送り出していきたい」。吉田専攻研究員はこう話している。

 よしだ・しゅんすけ 名古屋大学大学院人間情報学研究科博士課程修了。平成13年通信・放送機構(TAO)入所。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)を経て、18年情報通信研究機構(NICT)に入所し、ユニバーサルメディア研究センターに所属。裸眼立体映像技術の研究などに取り組む。36歳。愛知県出身。

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