
子どもに食糧難を疑似体験
農業に誇り
―昨年の8・15からの1年間で世界の情勢は大きく変わりました。原油相場が倍以上になると誰が予想できたでしょう。穀物相場も急騰しています。欲しいときに欲しい量を買い漁ってきた日本の食事情は「奇跡」に近いとさえ思うのですが。
金氏 まさに奇跡の時代が長く続いてきましたね。世界を相手に大量に食料品を買い付けながら、一方で惜しげなく大量に捨てているわけです。そうして食べ物を粗末にした揚げ句が食料自給率39%という現実でしょう。こんな状態ではこれから先が心配ですよ。なんとかして日本の自給率をアップする方法を考えないといけません。具体的にどうしたらいいのか。素人の私には難しいことではありますが、たとえば食べ物を粗末にしないこと、ともかくも捨てるようなことだけはしないこと、こんなところから始めてはいかがでしょう。これなら誰にでもできます。
そしてもっと農業を大切にしましょうよ。政策的にもいろいろ手だてを講じて若者が農業に魅力を感じるようにする。やっぱり仕事は報われなければだめなのですよ。そのためには、農業という産業にある程度しっかりした経済的裏付けをすること、そして従事する人の社会的地位を高めることだと思います。自分の仕事が人々から感謝されているのだと感じることで農業という仕事に誇りを持つようになる。私たちがちょっと心掛けることで日本の農業にもっともっと広がりをもたせることが出来ると思うんです。
日本製品はなんでも品質がいいんですよ、とにかくレベルが高いんですよ。私たちがもう少し国産品の消費を増やすだけで生産者の皆さんはもっともっと前向きになれる。そうした姿勢を私たち消費者が見せることが大切ではないでしょうか。いつも私は言うんですが、日本を再生させるためには、「メード・イン・ジャパン」に回帰すべきですよ。これは農業を含めて物質的にもそうですが、精神的にもメード・イン・ジャパンへの回帰が必要です。と言ってももちろん一朝一夕にはできることではありませんが、足元のところから実行するなかで日本の自給率のアップにつなげ、さらにアジア、世界へと広げていく。そうなればいいなあと考えているのですが…。
桐山氏 しかし正直なところ今の日本人には少しばかり飢えて「大変だ」と顔色変えてジタバタすることも必要ではないかという気もする。艱難辛苦ではありませんが、私たちの世代は、そういう苦難をすでに経験していますから、少々のことでは慌てないだけの度量をもっています。これから日本がどんなに食糧が少なくなったとしても私自身は心配しません。
金氏 私は食いしん坊ですから出来ることならおいしいものを食べたいなあ(笑い)。それはともかくスーパーにいくと世界中のおいしいものが全部日本に集まっていることがよく分かります。国力と経済力があるからこそで、それというのも先の大戦で犠牲になった方々のおかげです。みな贅沢に消費していますが、恩義を忘れてはいませんか、と言いたい。
桐山氏 残念ながら気づかない人の方が多いでしょうね。
金氏 私も先ほども申したように台湾で食糧難を経験しています。これから先も経験しなくていいのならそれにこしたことはないけれど、実は子供たちに一度は食糧難を疑似体験させたほうがいいだろうと思って実行したことがあるのです。まず親から率先して我慢しなければならないのだから、それはそれでなかなか大変でした。でも粗食を勧めようにも今の人にはなかなか受け入れてもらえないでしょうね。
桐山氏 この時期になると、すいとんってなかなかおいしいですね、などという声も聞くけれど、粗食とはなんたるかを知らないから気楽に言えることです。ダイエット食みたいな感覚でしょうかね。まずふつうの人は本当の粗食を食べることが出来ないでしょう。それは決しておいしいものではない。まずいものです。なぜなら食糧がない世界で、幸いにも手に入ったのなら、どうしてでもそれを食べなければならない。はたしてどうやったら食べられるか考え工夫し調理する。味など二の次。生き延びるための手段としての食事です。これが究極の粗食です。私の経験ではいざとなったらなんとか食べられるものですよ。
| << 戻る | 対談トップへ | 次へ >> |
