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■注目企業のトップに聞く             

エニーズ社長

川ア昌子(かわさき・まさこ)さん

    キャリアウーマンを素敵なスーツで支援

 

 

 ビジネスシーンにおける女性の存在感が増すにつれ、女性向けビジネススーツの需要が高まっている。キリッとしたスーツの印象が、真剣勝負の商談の場で大きな効果を発揮する。アパレルのエニーズ(本社・大阪市西区)はそんな女性たちのニーズを取り込み、1人ひとりの体形に合わせた「美しく見せる」オーダーメードスーツのビジネスで業績を伸ばしている。

 同社は6年前、アパレルの店舗販売員の経験をもつ女性たちを集めて設立した。こうした女性たちを「キャラリスト」と呼ぶスタイリストに養成し、紳士向けのオーダースーツなどを販売するビジネスを展開。今年2月からレディーススーツのオーダーメード事業を始めた。

 「紳士服メーカーがレディーススーツを作ると、仕立てが紳士服なので『ちっこいおっさん服』になります。女性が見立てて、女性が採寸し、婦人服工場で縫製することで、センスのいいスーツを作ることができる」。川ア昌子社長は女性たちのパワーに自信満々だ。



    専業主婦から転進


――出身は

 「1961年、大阪市で生まれました。中学生ぐらいから父親が経営するテーラーを手伝い、高校卒業後は2年ほど米国に留学しました。帰国後、ゼネコンで経理の仕事をして、24歳で結婚、長女をもうけましたが、『次は第2子』と考え始めた時、『ちょっと待てよ、何か違う』と…。夫はまじめな人で何の不満もなかったのですが、私は仕事をしたいという思いが募っていたんです」

――最初のビジネスは

 「まず、住んでいた堺市で英会話スクールを立ち上げました。当時は周辺に英会話の大型チェーンも少なく、こんなに儲かっていいのと思うほどでした。でも、私生活では夫婦関係がギクシャクし始め、結局は離婚しました」

――その後の展開は

 「英会話のビジネスが軌道に乗るにつれて飽き足らなくなり、英会話教室の運営をスタッフにまかせて、ニューヨークに遊びに行きました。そこで知り合った友人を通じて、ニューヨーク・ファッションを買い付けるバイヤーの仕事をするようになりました。時流に乗っていたのでしょう、百貨店から出店依頼が来るようになり、最盛期は百貨店などに6店舗も展開していました」

 「ニューヨークでの買い付けや資金繰りなど、刺激的なことがいっぱいでした。売り場の販売員に女性を採用していて気づいたのは、小さい子供を抱えた母親が多いことでした。見た目は20代の“キャピキャピ”なのですが、離婚経験者や未婚の母など事情をもつ女性が多かったのです。こうした女性はなかなか普通の企業に入れませんが、アパレルの販売員なら採用されます。それでも、百貨店のバイヤーからは『おたくは販売員の年齢層が高くなっている。若返らせないとヤング服は売れない』と注意されました」

――厳しいですね

 「百貨店の販売員は新陳代謝が求められるから、うちも若手に替えました。アパレルや化粧品業界に共通する常識です。婦人服の販売員は30歳から35歳で一線を退かなければならない“賞味期限つきの仕事”と言われています。彼女たちは本部にも戻れず、生活の糧を失ってしまいます。シングルマザーも多く、生活を支えているだけに状況は深刻です。そこで、いくつになってもキャリアアップできる仕組みをアパレル業界の中でつくろうと思いました。単に既製服を売るのと違い、オーダーメードの世界ならできると思いました」


     女性の自立を目指し会社設立


――テーラーの女性版ですか

 「そうです。販売員であると同時に、技術職ですから、しっかり勉強しなければならない。メジャーで採寸して、顧客の要望をデザインに落として、工場に指示書が書けて、検品できて、生地のことがわかる。そんなトータルなファッションアドバイザーとして養成しようと思いました。当社ではキャラクターとスタイリストから取った造語『キャラリスト』と呼んでいます。そんな志をもって、2000年に女性だけの女性のための会社『エニーズ』を立ち上げました。設立当時のメンバーはシングルマザーばかりでした。2週間の導入研修などを経て、キャラリストの資格を得た女性は現在約160人です。ニューヨーク・ファッションの店を閉め、英会話教室も手放し、エニーズの仕事に専念するようになりました」

――なぜテーラーは男性ですか
 
 「寿司職人と同じで、女性が入れない世界でした。生地に女性の香水がついたらまずいとか、仕立て職人が男だから女性の言うことを聞かないとかが、その理由です。だから、うちは香水禁止。商品を触る前には手袋をはめています。同業の老舗テーラーから文句を言われないように、細心の注意を払っています。しかし、このビジネスをやり始めて、テーラーにできなくて女性にできることが多いこともわかりました。女性特有のセンスを生かせば、ファッションアドバイスができるのです。ネクタイの選び方、シャツの選び方、小物の選び方なども含め、トータルコーディネートを提案できます」

――具体的な仕事は
 
 「当社の大阪のサロンや東京、徳島、ニューヨークにある特約店『キャラリスト・ステーション』、出張サービスなどで、お客様の要望や悩みを聞いて、どんなスーツを作るかをお客様と一緒に決めていきます。2、3週間の納期でお届けしますが、1カ月経ってから着心地などをうかがうなど、アフターケアにも力を入れています」


    
新分野に挑戦


――レディーススーツの狙いは

 「2002年ごろから、輸入物の安売りスーツが大量に入ってきました。そこで、紳士服に限定するのではなく、レディーススーツという、どこも成功していない分野に乗り出すという壮大なプランを思い立ちました。女性ばかりでつくった会社なので、自分たちが着たいスーツを追求していけば良いものができると考えました。いろんな試作品を作ったうえ、今年2月、販売を始めました」

――女性の好みは女性にしかわからない
 
 「紳士服メーカーもレディーススーツを作っていますが、仕立てが紳士服なので、『ちっこいおっさん服』と言われ、おしゃれなOLは見向きもしません。女は灰になるまで女。女らしさを表現できる服を着たいと思うのです。だから、スーツであっても細く見せる必要がある。年齢とともに体のラインは崩れますが、それを見せないように補正スーツのように仕上げます。例えば、美しいラインを作るため、袖は限りなく細く見えるようにしなければなりません。ただ、単に袖を細くするだけでは、腕が上がらなくなる。この矛盾を解決するために何回も改良を加えました。背中にたるみがあってはだめです。紳士服は別名の『背広』の通り、背中を広くしますが、婦人スーツは反対で背中の面積を狭くしなければなりません」

――需要はありましたか

 「反響は大きかったです。女医や女性弁護士、看護婦、生保レディや証券の営業担当など、やり手のキャリアウーマンたちがさっそく顧客になってくれました。これからも伸びると思います。働く女性が増えているし、女性の働く意識が高まっているからです。生保業界も大きく変わってきましたし、銀行の女性スタッフもスーツを着始めています。平均的な価格帯は5万−6万円です」

――女性にもスーツが必要な時代ですね
 
 「今でもジーパンとTシャツで出勤するOLが多いでしょ。私は『何がキャリアアップやねん』と思います。男性陣は金をかけてシャツとスーツ、ネクタイを真夏でも身につけています。最初から、戦闘モードが違うわけです。きちんとした身なりをしたら、相手もきちっと対応してくれます。生保の営業レディがジーパンと毛糸のカーディガンを着て『こんにちは』と法人営業に行っても、『忙しい、忙しい』と追い返されるのが関の山です。パリッとしたスーツを着て営業すれば、相手は丁寧に対応してくれます。『服装で相手の言葉遣いまで変わる』。私からのアドバイスです」

――どこで縫製するのですか

 「国内の3社の婦人服工場にお願いしています。紳士服と婦人服とでは縫製工程が全く逆で、部品や部材も全く違います。紳士服工場で20年務めても、婦人服工場にいけば役に立ちません。だから、紳士服の縫製工場では難しいと思います。ただ、女性服の工場は既製服を縫っているから、オーダー服はつくれなかったのですが、『オーダー服はこうして作るのです』と指導してトレーニングしてもらいました。」

――どんな販売方法ですか
 
 「店舗営業のほか、企業の会議室などを半日ぐらい借りて会場にし、採寸会や納品会を開いています。女性の営業スタッフが大勢いる会社だと、半日ほど待機していると、みんなが来られますよ。多くの方がリピーターになってくれて、『前回はストライプだったから今回は無地で』といった具合に何着もつくってくれます。女性の営業スタッフが格好良くなると、会社のイメージが良くなり、売り上げも上がるので、企業側も会場提供などで協力してくれます」


      海外進出、OEMでの全国展開…


――ネットでオーダーしても採寸できるのですか
 
 「できます。女性は通販になれているから、自分の号数を知っています。自分の体の測り方も知っている。だからクレームはほとんどありません。韓国向けにネット販売をしようと思っています。ソウルのOLは日本のOLより意識が高いし、お金をもうけています。キャリア志向があるから、センスの良いスーツを探しているはずです。アジア人の体形は同じですから、中国・上海のOLにも気に入ってもらえると思います」

――これからの事業展開は
 
 「このシステムをOEM(相手先ブランド製造)として、街のテーラーに使ってもらおうと思っています。どこも大手紳士服チェーンの進出で弱っています。うちがレディーススーツという新しい商材を提供するので、うちの特約店になって、その注文をとってもらう。テーラーの顧客には奥さんもお嬢さんもいますから。今年2月から始めます。テーラーだったら採寸ができるし、いい生地をもっているから、好きな値段をつけられると思います。うちはパターンと縫製でお金をいただきます」

――直販は続けるのですか

 「直販の拠点となる東京サロンの立ち上げが今、最終段階になっていますが、現在の大阪と東京でしか直販をするつもりはありません。OEM特約店と、うちの商品だけを販売するキャラリスト・ステーションを全国に展開する計画です」


              <略 歴
1961年 大阪府生まれ
    79年 大阪府立吹田高校卒業
81年 日本技術開発に入社
88年

岡税理士会計事務所に入所  

     89年 英会話スクールを設立
     97年 ジェイズジャパンを設立し社長に就任
   2000年 エニーズを設立し社長に就任


  <会社メモ> 
 2000年設立。本社は大阪市西区北堀江1−1−10。主な事業はオートクチュールファッションの企画開発と販売、ファッションアドバイザーの養成などを行う「キャラリスト」事業やアパレル小売店での運営販売代行などを行う「リテールエージェント事業」、アパレル業界などに人材に派遣する「人材エージェント事業」。資本金は1億352万円。売上高は約3億円。



(2007/1/6)

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